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沖縄県医科学研究財団研究奨励賞受賞 老年看護学・助教 東恩納美樹 受賞内容のご紹介

2021年05月27日(木)

 

令和2年度沖縄県医科学研究財団研究奨励賞受賞 老年看護学・助教 東恩納美樹

 

沖縄県医科学研究財団より研究奨励賞を受賞いたしました。この度の受賞理由として、「患者の安全という視点で看護実践と患者アウトカムの関連を科学的に検証し、看護の成果を可視化する研究を行っており、世界的にも知名度のある雑誌に論文を掲載し高い評価を得ている。日本の看護実践研究の国際発信を看護学の発展への貢献と捉え、国際学術誌への論文投稿、国際学会発表に取り組み努力を重ねている。看護学のさらなる発展に寄与するものと期待される」とのお言葉をいただきました。
国際学術誌に掲載されました転倒転落リスクアセスメントに関する研究と看護提供方式に関する研究を紹介させていただきます。

   

1.改変版日本看護協会転倒転落リスクアセスメントツールの予測妥当性

  転倒転落リスクアセスメントツールに含まれる要因の例  

入院患者の転倒転落の予防における看護師の役割は重要で、看護の質を示す指標の1つです。日本のほとんどの急性期病院では、看護師が入院患者全員の転倒転落のリスクについて、リスク因子のチェック表のようなもの(転倒転落リスクアセスメントツール)を用いて確認しています。この研究では、A病院で使用されている転倒転落リスクアセスメントツールの予測妥当性(予測能)を調べ、予測妥当性の観察期間(7日間、14日間、21日間、28日間)による変化を検証しました。その結果、A大学病院の一般病棟入院患者における予測妥当性は良好であること、感度・特異度などの予測能を示す指標の値が観察期間によって異なることを明らかにしました。

 

Higaonna M. (2015). The predictive validity of a modified Japanese Nursing Association fall risk assessment tool: A retrospective cohort study. International Journal of Nursing Studies, 52(9), 1484-1494.

 

▼論文へのアクセス
https://doi.org/10.1016/j.ijnurstu.2015.05.009

   

2.エビデンスに基づく転倒転落リスクアセスメントツールの作成および評価者間一致性に関する研究

  評価者間一致性と便利性の研究方法  

国内外の文献レビューを基に入院患者を対象とした転倒転落リスクアセスメントツール(11リスク因子23項目)を作成し、A大学病院の入院患者のうち研究参加の同意が得られた114名それぞれにつき2名の看護師にアセスメントを実施してもらい、評価者間一致性を検証しました。看護師間の一致性は、23項目中21項目は「ほぼ完全」または「十分な」一致で良好でしたが、排泄と認知機能の項目は、改善の必要があることが明らかになりました。

 

Higaonna M., Enobi M., & Nakamura S. (2017). Development of an evidence-based fall risk assessment tool and evaluation of interrater reliability and nurses’ perceptions of the tool’s clarity and usability. Japan Journal of Nursing Science, 14(2), 146-160.

 

▼論文へのアクセス
https://doi.org/10.1111/jjns.12144

   

3.看護提供方式と患者アウトカムの関連に関する研究

  固定チームナーシング/PNS  

看護提供方式は、看護単位(例えば入院病棟)における看護ケアの提供の方法や役割分担の仕方を示したものです。本研究では、日本の急性期病院で採用されていることの多い2つの看護提供方式(固定チームナーシング、パートナーシップ・ナーシング・システム®:PNS®)と患者アウトカムの関連を検証しました。固定チームナーシングでは、看護師は1人で複数の患者を担当しますが、PNS®では、看護師は2人1組で複数の患者を担当します。2人の看護師が患者のアセスメントや看護ケアに関わることから、より安全で質の高い看護ケアの効率的な提供につながると考えられており、その効果を診断群分類に基づく1日あたり包括払い制度(DPC/PDPS: Diagnosis Procedure Combination/Per-Diem Payment System)の大規模データを用いて検証しました。その結果、A病院においては、看護提供方式と入院患者の30日以内死亡に関連があるとはいえませんでしたが、機能低下(日常生活動作の低下または入院中の死亡)のリスクは、固定チーム期間の患者と比べてPNS®期間の患者が1.4倍高いことが明らかになりました。

 

Higaonna M., Morimoto T., & Ueda S. (2020). Association between nursing care delivery models and patients’ health outcomes in a university hospital: A retrospective cohort study based on the Diagnostic Procedure Combination database. Japan Journal of Nursing Science, 17(2), e12319.

 

▼論文へのアクセス
https://doi.org/10.1111/jjns.12319