新型コロナ感染症パンデミック後期から、デング熱は台湾、フィリピン等の流行は深刻な状況になっています。これは地球温暖化の影響も強いと考えられており、グアム島の太平洋小島嶼においてもアウトブレイクが起きています。琉球大学保健学研究科国際地域保健学の小林らとフィリピン大学は文部科学省の科研費国際共同研究加速基金による「市民科学と時空間解析よるCOVID-19流行時のデング熱発生リスク評価の研究」を2020年度より進めてきました。これはリモートセンシング技術等を利用した地理的情報システムによるデング熱発生のホットスポットを見つけるという先進的研究を展開しています。一方、デング熱の有効な対策の一つとして学校保健を基盤としたデング熱対策の研究も推進してきました。この一環として6月18日にフィリピン国パンパンガ州サンフェルナンド市教育省において、プロジェクトによって開発された小学校で使用する教師用と学童用のマニュアルの授与式が盛大に行われました。このマニュアルは、フィリピン大学の版権のもと、フィリピン教育省と東南アジア教育大臣機構熱帯医学公衆衛生ネットワークの認可によって出版されたものです。
学校保健ベースのデング熱対策に関する研究はアジアではマレーシア国等で多く報告されてきましたが、正式に学校教育にもりこまれていくためには教育省で承認された教材開発が必要です。またフィリピンでは新型コロナ感染症パンデミック以前に実施されたデング熱ワクチンのトライアルが社会不安をもたらしました。またパンデミック後は、コロナ感染症とデング熱が類似した症状を示す熱性疾患であることから、一般住民の間ではその違いが適切に認識されないことが予測されてきました。このような状況で地域住民へ適切な保健情報を伝えるのに教師と学童は重要なヘルスメッセンジャーであります。今回出版されたマニュアルが利用されて、フィリピン国のみならず東南アジア各国の参考になればと考えています。
サンフェルナンド市教育省におけるマニュアルの授与式