プレコンセプションケア(PCC)は,受胎前(妊娠前)の女性やカップルの健康状態を改善するような健康支援を行うことで,母子保健の増進を図ることを目的としています.妊婦死亡や周産期死亡等,母子の予後が悪い国や地域では,改善に有効な保健政策として行われています.日本ではこれらの指標が改善されていますが,低出生体重児出生率や子宮頸がん罹患率の高さ,不妊症治療者数の増加など,子どもや男女の健康指標改善に向けた方策が求められています.しかし,その検討に必要なPCCに関する意識や行動の実態や介入効果について十分に明らかにされていません.
そのため私たちは若年成人に焦点をあてて,PCCに関する意識や行動の実態を明らかにすることを目的に,日本国内に住む18から24歳の男女にインターネット調査を行いました.今回はその結果の一部をご紹介します.
妊娠中の喫煙や暴力を受けた時の相談場所についての知識をもっている人が多い一方で,胎児の先天異常リスクを減らすための葉酸摂取や月経にかかわるホルモンの知識をもっている割合は少ない結果でした
(図1).そのため,胎児や自分自身の生涯の健康を保つために,これらの内容について情報提供を行う必要性が示されました.食生活調査では,主食であるご飯,主菜である肉,卵,大豆製品,副菜である野菜は偏りなくとれていると考えられました.しかし,肉に比べて魚の摂取頻度が少なく,砂糖入り飲料や脂肪の多い食物を週4日以上とっていた方が3割程度いたため,食生活を見直す必要があるかもしれません.運動習慣では,運動していない人の半数が「これからも運動しない」と回答していました.生涯を通じた健康を保つには適切な身体活動量の維持が効果的であるため,若年成人の方に身体活動量を促す支援の必要性が示されました.
沖縄県は,低出生体重児出生率や若年出産割合,子宮頸がん罹患率が全国で上位であるため,これらを改善するための戦略構築が求められています.今後は沖縄県在住者を対象にした研究を進めていく予定です.
(本研究は,2022年度琉球大学科研費獲得ステップアップ経費 (22SP12104)の助成を受けて行いました.)
(文責:研究代表 遠藤由美子)