2023年11月24日(金)11時~12時、奄美群島助成金を受けた与論島の9名(中学3年生4名、高校1年生2名、保護者•引率3名)が、保健学科を訪問し2階会議室にて意見交換をしました。生徒さんは自分達で作成した「4日間のしおり」を持参し、進路についてまだ決定していませんが、自身で熱心に質問したり意見を聞いたりして参考にされ有意義な1時間を共にしました
※7月31日(月)に保健学科訪問を予定していましたが、台風の影響を受け、フェリーが出ない場合も考えられるため、安全をきして今回の来学になりました。24日に本学、25日には専門学校チームと名桜大学チームに分かれて訪問予定です。
離島医療に関心があることで来学前に事前に論文「沖縄県内のM島における排尿障害の問題についての顕在化と対応策、リポジトリURL:https://doi.org/10.24564/0002019411を紹介しました。
Q1:今回、初めてのツアーで保健学科が最初の訪問です。与論島に大学生がいないので、生徒は国立大学、県立大学、専門学校などもみていかないとイメージが全然ついていないです。保健学科について教えてください。
【今泉】
保健学科では大学1年生で教養、2年生以降で専門、その過程でどんどん専門性が分かれていきます。1年生では60名全員が一緒に受ける専門基礎科目(解剖学、生理学など)で、医療の
基礎となる授業を提供しています。
【大湾】
看護コースの全員が看護師の国家資格を目指します。1年生の入学時オリエンテーションで説明があり養護教諭については、1~2年生の時から教育学部で養護教諭に必要な科目を受講しています。保健師コースも助産師コースも3年生から専門科目として分かれます。助産師コースなら定員6名の優秀な学生を選抜します。学生は資格に必要な授業科目を受けてから看護師、保健師、助産師、養護教諭の国家試験を受験することができます。
琉球大学ホームページで琉球大学高校訪問2020年度~2023年度Web高校訪問アーカイブに医学部保健学科のカリキュラムやコースなど掲載しています。2021年度から検査技術学コース
は今泉直樹先生、看護学コースは大湾が説明していますので参考にご覧いただければと思います。
Q2:卒業後、仕事するためには何が必要ですか?国家資格についていかがでしょうか?
【大湾】
学生は4年生の2月に国家試験を受験して3月に合格し、検査技術学コースでは臨床検査技師、看護コースでは保健師、助産師、看護師の国家資格を受けられます。臨床現場で仕事してから臨床検査技師なら細胞診の資格を受けるためにさらに勉強している方もおります。大学卒業後、大学院へ進学する学生もいます。これで終わりではなく専門性をもち一生勉強です。
琉大病院では、原則として通算5年以上の臨床実務経験の看護師が、働きながらの研修で医師と連携して臨床実践能力の高い看護師の育成として「看護師特定行為」研修を修得できます。
私が講義をしている沖縄県看護協会では感染管理認定看護師教育課程「感染管理認定看護師」教育研修があります。5年間の看護師実務経験を得てから受験できます。
保健学研究科では大学院修士課程に進学した学生が「がん看護専門看護師」を目指しています。
保健学科卒業後大学院に進学して、がん看護専門看護師の資格を修得することも可能です。
【今泉】
卒業後に何になるのか?一般的には看護師は病院、他に訪問看護があります。保健師は訪問や市役所とか、養護教諭は学校が主になります。検査技師は病院の検査室で血液・尿・エコー・心電図などの検査をします。会社で働く卒業生もいます。
保健学科は60名定員で入学後、大学院では10名定員の修士課程と3名定員の博士課程があり進学する方もいます。
Q3:ストレートで進学すると何歳になりますか?
【今泉】
修士課程修了は24歳、博士課程修了は27歳です。特に研究をしたい方はどうしても経済的なことで一旦大学を卒業して働いて、大学院へ進学する方、働きながら大学院で学ぶ方もおります。医療分野で医療技術短大3年生課程から4年生大学、さらにステップアップする中で職場の管理者として臨床検査技師長や看護師長、部長がさらに専門性を学ぶために大学院入学がかなり増えました。自分自身か専門学校か大学で勉強するかの違いで皆さん、勉強されると思います。
Q4:大学を出て病院で働いて仕事される方は、どの位いますか?
【大湾】
10名位は琉球大学病院に就職します。国立大学病院看護師は県外の大学病院との人事交流ができます。沖縄県立病院の看護師は離島などへ転勤もあります。基本的に何をするにしても、志を高くもつことと思います。自分はだめじゃないか?できないじゃないか?と決める前に、自分には何ができるか、これなら自分ができると積極的に自分から申し出て前にドンドン進むと、何が必要なのか心持ちも高く良いですね~。お金が無いからと言って受験できないことではなく、推薦入学する学生もおります。助成金制度、奨学金制度、授業料免除もあります。日本看護協会は看護学生に奨学金制度、市町村は居住地域や出身地域の学生などへの奨学金制度もありますので、入学後は一人で悩まずに学務課事務職員や指導教員に相談して申請すると良いですね。
Q5:サークルやクラブの活動などについてどうですか?
必ずしも部活に入らないといけないですか?
【大湾】
サークルは全学にも医学部にもあります。自分の好きなところでやれます。
【今泉】
部活している生徒がどういうリーダーシップをとったか、どういう高校生活をしてきたのかと興味があり知りたいですね。別に部活をしていなくても受験には特に問題はありません。
家の手伝いをして頑張ったとかでも良いです。僕は大学時代、バスケットボール部でした。
沖縄県はバスケットが盛んです。サークルは大きい小さい規模100以上あります。サークルは自主的に友達同士でつくることも可能です。昔はカレー部もありました。
Q6:みんなは与論島の実家から外に出るので学生寮か一人暮らしになります。
学生寮は良かったですか?
【今泉】
僕は北海道札幌出身で最初は学生寮に住んで沖縄の友達や部活や学部のいろんな友達もでき今でも交流があります。学生寮は男子寮と女子寮に分かれて留学生も入ることができます。僕の入った寮は12人の1フロアーで個別の部屋に机とベッドがあります。12名は学年も学部もバラバラです。トイレとキッチンは共有スペースです。ちょっとゆっくりしたいスペースで皆と話をしていろいろな情報が入ってきます。今日は掃除の日とかで掃除してフロアーで皆さん仲良くなり飲み会もあり、経験として寮も良いかも知れません。
最初から一人暮らしをしている学生もいます。
Q7:どんな学校行事がありますか?
【今泉】
大学の行事では、全体では学園祭などがあります。保健学科では1年生になると6月前後に1・3研修があります。宿泊施設に1年生と3年生の希望者ほぼ全員、指導教員が引率で1泊2日の宿泊研修をしてバーベキューや運動をします。
【大湾】
7月にオープンキャンパスがあり、沖縄県内外の高校生が琉大に来て、学生や教員から大学や検査技術学コースと看護学コースの説明、体験学習、進路相談、将来の自分の相談などがあります。3月は卒業式、4月は入学式、12月には学会発表形式で4年生全員の卒業研究発表会があります。各教室研究分野で3年生~4年生の12月まで卒業研究します。3年生が進行係、学会発表形式で4年生が座長、1年生~3年生が聴衆者として参加しています。
Q8:教員の立場として、どんな学生が入学してもらった方が良いと思いますか?
一教員としてどう思われていますか?
【大湾】
今迄の豊かな経験を積み重ねて、大学で積極的に活発的に調和をとってやっていただけたらと思います。臨床検査技師も看護師もチーム医療でやるのでコミュニケーションも必要です。自分ひとりで落ち込まない、皆さんと一緒になって会話ができたら良いですね。
高校の生徒さんには受験前に保健学科のホームページを見て決めている人もおります。
琉球大学は総合大学です。教育学部で学ぶこともできます。語学では英語を基礎としております。高校の時にメキシコ留学を経験し在学中にメキシコへ留学した看護学生もいます。
【今泉】
保健学科では受験生全員に面接しています。どうしても保健学科に入学したい生徒さんや入学してこういうことをしたいとやる気のある生徒さん、一生懸命な生徒さんと一緒に勉強したいな~と思います。保健学科に入学する学生はとても素直です。自主的な学生は留学も自分で決めて1年間休学して、あるいは夏休みに海外へ行きます。
Q9小林潤学科長のラジオトークで奥様がラオスのご出身とお聞きしました。
JICAとも連携しているのですね。
【今泉】
保健学科の小林潤学科長は海外との交流を強くされ、研究調査も海外で行っております。
フィリピンやラオスなどの東南アジアやアフリカからの留学生も来ております。将来JICAで働きたいとかいろいろな学生がおります。
Q10保健学科棟は何年たちますか?この跡地利用は決まっていますか?
【大湾】
医学部と病院は1984年(昭和59)に那覇市与儀から西原町に移転して40年、古くて建て替えが必要になり2025年には西原町から西普天間に移転します。跡地利用はまだ決まっていません。海軍病院と隣り合わせで英語での交流も予定されています。さあ~皆さん、休む時はゆっくりお休みしてエネルギーをためて常にファイトでいきましょう。
保健学科から河田真智子さんからの写真集(医療への提言、ひとりひとりが宝もの、生きる喜び)3冊を贈呈しました。
人文社会学部琉球アジア文化学科大学院人文社会科学研究科准教授高橋そよ先生は鹿児島県与論島で民俗学的研究をされ、お世話になっている島に恩返しと島の子どもたちの教育支援をボランティアで行おります。
与論島には高校はありますが、中3の受験段階で高校終了後に「大学進学をするか」、「就職をするか」を決めなければならない。島の親御さんたちは、島外にどのような「仕事」があるのかイメージもつかない子どもたちにとって、中学段階でそのような将来像を具体的に描くことができないことを憂いています。そこで、ご家族や地域の教育NPOが、子どもたちが主体的に自分たちの未来を描けるように、中学生の子どもたち自身で、知りたいと思う仕事や大学の専門分野を訪問する旅の計画をサポートしています。その中の数名から、将来、島の医療や母子保健に携わりたいと考えており、ぜひ、保健学とはどのような学問なのか、そして、そこで得られた知識を通して、どのように社会と関わっていくことできるのか、与論島の中学生、高校生との面談時間をいただきたいと小林潤学科長に相談がありました。高橋先生は、コミュニティのチカラと潜在力に関心がおありで文化の視点からコミュニティの持続可能性についてサポートできないだろうかと、いつも考えておられます。
今回、今泉直樹先生(生理機能検査学分野)と大湾知子が対応させていただきました。
与論島の皆さまと意見交換できる機会を与えてくださった皆さまに心より感謝申し上げます。ホームページに掲載ということで、御報告としてまとめさせていただきます。
文責:大湾知子(成人・がん看護学分野)